電子カルテ時代における臨床支援システム


−弊社サブシステムの紹介−

日本光電メディネット


1.はじめに

弊社は、専用ハードウェアを多用して実現していたデータマネジメントシステム
(バイタルサインの蓄積および2次処理データを管理・表示するシステム)を1988年
頃に汎用のワークステーション、ミニコンを用いたサーバクライアント方式で実現
した。当初はバイタルサインの収集頻度も5分に1回程度であったが、近年、500
サンプル/秒のレベルで波形を連続的に扱うこともできるようになった。
本発表では、弊社の臨床向けシステムのうち代表的なものを紹介するとともに、電子
カルテ時代における役割、課題を考察する。

2.看護支援システム(NSS-1100)
看護支援システムNSS-1100はICU、CCUなどの重症病棟用に開発したもので、
従来のデータマネジメントシステムのデータ収集機能を基本として、観察項目や処置
項目、記事項目などをあわせて入力・管理できるようにしたシステムである。データ
を収集し管理するセントラルサーバを1台、各ベッドでデータを表示したり、観察項目
などの各種項目を入力する複数のベッドサイドクライアントから構成される。
  本システムが扱える患者数は標準システムで最高16人、連続的に測定しているバイタル
サインは1分単位で、不定期に計測しているバイタルサイン・観察データ等は発生・
入力単位で入床から退床まで、最高約3ヶ月間分(16人構成時)を保持することが
できる。図1に熱計表画面を示す。


         図1  熱型表

3.看護支援システム(NSS-1200)
  看護支援システムNSS-1200はNSS-1100の経験をふまえ、病棟でのより良い看護の実現を
支援するために開発した。NSS-1100に準じた検温表(熱計表)作成支援機能の他、
カーデックス機能、ナースノート(小型携帯端末)のサポートなどを実現した。
本システムの基本構成は1病棟につきナースワークステーション、カラープリンタ、
ナースノート通信ユニットがそれぞれ1台、ナースノートが必要台数(複数台)である。
本システムが扱える患者数は標準システムで最高80人、約1ヶ月分の様々なデータを
保持することができる。
本システムで特徴的なのがナースノート(小型携帯型端末)の活用である。ナースノート
には病棟内の全患者の予定とともに過去1週間の経過記録が入っている。これにより、
  看護婦さんはデータを収集するだけではなく、収集の際に経過等を参照しながら、状況
  をより正確に早く知ることができる。また、受け持ち以外の患者さんの情報も含まれるた
  め、従来なら他の看護婦さんに確認したりナースステーションに戻らなければ対応できな
  かったことにもその場で対応できるなど、業務の効率化に対して様々な可能性を有している。
  標準的なシステム構成を図2に、熱型表を図3に、カーデックスを図4に、ナースノートの
  画面例を図5・6に示す。




    図2  基本システム構成

    図3  熱型表

    図4  カーデックス

    図5  検温表

    図6  スタンプ・メモ

4. 麻酔記録システム(CWS-1100)
麻酔記録システムCWS-1100は、術中の患者管理において発生する情報を統合的に収
集・管理・表示するとともに、麻酔記録作成作業を支援するシステムである。データを
収集し管理するセントラルサーバを1台と、各手術室でデータを表示したり、処置の入
力を行う複数のクライアントから構成される。心拍数・血圧値等の連続測定データや、
心拍出量などの不定期測定データを始め、各種モニタからのデータ検査結果などのオン
ラインデータを画面上に表示可能である。画面は、術前記録・麻酔記録・術後記録の3
つに大別でき、各画面の切換はワンタッチで行なえる。麻酔記録作成作業の効率化が図
れるだけでなく、誰にでも読みやすい記録が作成でき、記録内容の標準化を図ることが
できる。麻酔記録画面を図7に示す


    図 7  麻酔記録

5. 生体情報管理システム(CWS-4000)
生体情報管理システムCWS-4000は、重症室や術中のモニタリング波形と各種モニタ・人
工呼吸器等からの数値情報を統合し、集中管理するシステムである。本システムは、
セントラルサーバでデータ収集と管理を行う。NSS-1100やCWS-1100とリンクする場合には、
複数のベッドサイドクライアントが構成に追加される。48時間以上の波形保存が可能で、
数値情報は最低1ヶ月保存できる。全患者画面は、導入施設のレイアウトに合わせ、一目
で患者の識別が可能であり、10項目同時表示のトレンド画面の他、圧縮波形表示や、任意
波形の拡大表示等、臨床で役立つ多くの画面を有している。また、看護支援システムや麻酔
記録システム等とのリンクにより、より充実した生体情報管理が可能となる。圧縮波形と実
波形の画面を図8に、トレンドグラフと実波形の画面を図9に、看護支援システムNSS-1100
と連携した時の画面例を図10に、麻酔記録システムCWS-1100と連携した時の画面例を図11
にしめす。


    図8 圧縮波形+実波形

    図9 トレンドグラフ+実波形

    図10 熱型表+実波形 

    図11 麻酔記録+実波形

6.共通の特長
今回紹介した臨床支援システムに共通する特長を以下に示す。
1)多用な表示形式
従来難しかった記号・シンボルなどの表示(記録)への利用が可能になった。またメモ機
能・張り紙機能などで任意の位置に手書き感覚で記録でき、より実際の記録に近づけること
ができた。
2)カスタマイズ可能
画面やレポートなどは基本的に実際に使っている書式に近づけることが可能で、表示が理
解しやすく、操作に対する抵抗感も少ない。
3)簡単な操作
  オフライン入力は、予め登録されたメニューからの選択入力であり、メニュー内容の変更・
追加は自由に行える。
4)高範囲なオンラインデータ収集を実現
  ベッドサイドモニタ、人工呼吸器などからのデータはもちろん、病院のホストコンピュータ
などからのデータをオンライン収集することも可能であり、入力操作は低減する。
5)正確な情報と見やすい情報の両立
バイタルサインデータを収集したまま細かく表示するモードと確認したデータのみを表示す
るモードとが簡単に切り替えられる。確認操作も一定時間おきに自動的に行える他、急性期
には容態推移を正確に表現できるように任意の間隔で記録できる。
6)光磁気ディスクへの保存
必要なデータは、光磁気ディスクに保存が可能である。また、入退室時の記録などもデータ
ベースとして管理できる。

7.電子カルテ時代における役割り
電子カルテへの取り組みが本格的となってきた現在、臨床における各種情報の電子化ニ
ーズが高まるとともに、弊社システムに対する要望も変化してきている。以下に概要を示す。
1)手書きに近いMMIの要望
従来、コンピュータシステムを導入するにあたり表示形式、帳票類をコンピュータのもつ仕
様にあわせる傾向があった。近年、より広く現場に普及するに至り、操作性および理解度の
  観点で積極的に従前書式にコンピュータ側の仕様をあわせる必要性が発生している。
2)バイタルサインデータベースとしての役割
従来は各種モニタ、検査装置からのオンラインデータ収集による患者在床中の情報整理、
帳票類作成支援的に使われることが多かったが、例えば電子カルテに代表される他システム
に対して画面レベルでの情報提供を要望される施設が増えてきている。
3)看護情報データベースとしての役割
医師の指示オーダに対して多くの部分を看護婦さんが対応している。実施記録という観点
で、看護支援システムの実績データの提供を求められる傾向がでてきている。
4)病院情報システムとのより強い結びつきと
業務関連情報の交換
従来、「病院情報システムとの接続」というと病院情報システムが管理している患者属性や
検査データを受信するのみの要望であったが、最近は前述のとおり弊社システムで管理する
データに対する提供の要請が増えている。

8.今後の課題
現在、弊社が対面している課題を紹介し、結語とする。
1)システム間の機能の割り振り
ユーザの要求により臨床支援システムも様々な機能を有するようになってきた。そのため、
施設によっては病院のホストコンピュータシステムと同じ機能を重複して持ったり逆に不足
したために追加で実現する必要が発生したりしている。
病院におけるシステムのモデル化、およびホストシステム、サブシステムでの機能の配分を行
  い、無駄も不便も抑えたい。
2)システム間の標準インタフェイスの検討
  病院内システムにおけるモデルの標準化とともに、それらの間でデータのやりとりを行うため
  のインタフェイスの標準化が必要である。ユーザもメーカも標準化の必要性を認識しているが、
  現実にはなかなか前進しない。
3)データセット、各種マスタの標準化
  メーカとしてなるべくマスタ、データセットなどの標準化を行いたいと考えているが、施設間
  での病棟運用、ケアの実際が異なるため、個別セットで対応しているのが現状である。今後、
  電子カルテなどの本格化が行われた際には施設間の共通化は大きな課題であり、ユーザ間で
  の調整を期待したい。

第3回 SeaGaia Meeting '97 (1997/05/23)