病院情報システムでのMML実装試験と病歴情報用MML関数の試作


山下 芳範

福井医科大学



はじめに
 本学では、病院情報システムの中で電子カルテを実現できるように、新しいシステム
に更新後、従来の機能を見直している。 電子カルテについては、試作として実験を行っているが、病歴データベースについては電子カルテに対応できるように、変更を加えてきた。 また、この病歴データベースを利用して、MMLへの対応についても実装試験を行っている。 現時点では、電子カルテそのものとしては稼動していないが、基本的な構成としては電子カルテに対応できるような方式へと転換を行っている。 今回は、MMLへの対応も含めて全体の改良を行っているので、これらのシステムの開発の概要と周辺要素の試行について検討を行った。


概要
 新しいシステムでは、クライアント側にwindowsNTを採用し、同時にデータベースの分散を図っている。 これに伴ってデータベースの改良やシステム間通信を電子化カルテ用に変更を行ってきた。
 本来、電子化カルテの実現にはオブジェクト型のデータベースを用いて作成することが適しているが、既存システムとの統合や他システムとの結合や共有などの点からこのような方法でアプローチしている。
 このため、以下の方針で段階的に改定を行っている。
1.独立可能なシステムについてはHL7等の標準プロトコルを利用すべく、電子化カルテの対応側で考慮する。
2.会計系統・部門系統および部門系統と共有する部分は、従来の方法との互換を保証して独立させる。
3.病歴系データベースは、必要に応じて内容を見直しする。
 このような点に従って、現状のシステムをもとに実装する作業を行っている。
 現在、開発済旧システムのリファインとGUIへの移行を行っているので、この実装もこの作業の中で試験を行っている。


方法
 電子化カルテおよびMML実装にあたって、データの整合性やトランザクションに関しての検討を行った。 既存アプリケーションについては、順次対応を考慮し、システム間通信を基本とするように独立させた。 これは、本学のシステムが、会計系及びオーダー系のシステムが病歴データベースを共有するようになっているためである。
 MML実装及び電子化カルテの対応するために、システム内部向けの標準インターフェース関数を準備し、これを経由することで、既存及び新規のアプリケーションに対応させた。 また、システム間独立は現実的には困難であるため、この関数での管理下でコントロールできるようにした。
 このインターフェース関数の下で、それぞれの要素を管理するためのデータベースを定義し、このデータベースがそれぞれのオブジェクトの実体、状態、履歴(バージョン)を管理することとした。 このデータベースは、新しく作成した電子化カルテに向けたGUIベースの表示のインデックスとしても利用することになった。 このインターフェース関数は、システム間での取り扱いの違いや目的に応じたデータのハンドリングを隠蔽化することが目的であるが、HL7の標準手順採用時にも機能拡張をここで可能とすることにも配慮した。
 ここでのMML対応におけるインターフェース関数の対応機能は以下の通りである。
1.MMLのタグに対応した、データベース内のオブジェクトとの対応
2.そのオブジェクトと関連した履歴の保持と管理
3.外部からの参照や変更にともなう実体と関連するオブジェクトとの同期処理
4.実(既存)運用システムとの仲介
 これらの機能をインターフェース関数で実現することで、実際の運用を行っているシステム内に組み込むとともに、新規運用アプリケーションはこれを経由する方法を組み込み実運用の中で利用している。 しかし、実運用のシステム自身では、MMLを直接利用していない。


まとめ
 MMLの実装を通して、現状の病歴データベースや既存システムに関るシステム間通信やトランザクションを明確にすることができ、電子化カルテに向けてのシステムの変更や見直しをすることに役立った。
 特に、オーダーシステムから発生する、変更更新イベントによる日付等に関る部分や先日付や予約分に関る情報更新イベントについて、システム間での取り扱いの差異を明確にし、調停などの整合方法をまとめることができた。
 今回の実装試験は、MMLの対応だけでなく、電子化カルテの実現に向けたテストであったが、実装のために開発したシステム内部用の関数については、実用的に利用可能であるため、既に実際のシステムに組み込んで運用を開始している。
 今回の実装試験を通して、MML対応によるデータの取り扱いは、現時点のシステム上で移行を進めているGUI対応のシステムでの利用でも大きな効果があったといえる。
 今後の方向としては、MMLのタグに対応した、管理定義を作成する部分を半自動化するために、タグとの対応の書式化とこれに伴うデータやシステムのコーディングの自動化を行い、電子化カルテへの対応を行う予定である。