医療データ高速参照画像表示の新フレームワーク

日本ヒューレット・パッカード株式会社

寺垣内 信次1、佐藤 慶直2

1PSO ローカルプロダクト事業部 Extended Enterprise Technology Laboratory
2エンタープライズ事業統括 公共システム営業

1. はじめに

昨今、DICOM (Digial Imaging Communication in Medicine) Version 3.0 規格準拠のアプリケーションや機器が徐々に、また着々と発表され始めました。その一方、DICOM 規格普及に伴って、そのデメリットが表面化してきました。すなわち、Conformance Statement に始まる遅いプロトコル、大きなデータサイズを取り扱う場合のパフォーマンスの低さ、院内ネットワークでの実運用における大きなコストなどです。ここでは、院内ネットワークにおいて高速かつローコストな方法でさまざまな参照画像用途で使用する医療画像やドキュメントイメージを管理する方法、FlashPix ファイル・フォーマットとインターネット・イメージング・プロトコル (IIP) を用いた HP OpenPix テクノロジーのフレームワークについて提案します。

2. DICOM の利点および欠点

DICOM Version 3.0 規格の利点と欠点を簡単に以下にまとめます。

2.1. 利点

2.2. 欠点

3. HP OpenPix テクノロジー

3.1. FlashPix フォーマット

1996 年の 6 月の COMDEX において、Kodak、Hewlett-Packard、Live Picture、Microsoft の 4 社の共同開発により次世代画像フォーマットの標準と目される FlashPix フォーマットが発表されました。

この FlashPix フォーマットの特徴を以下に簡単に挙げます。

現在、FlashPix フォーマットは Digital Imaging Group, Inc. (DIG) *1 というコンソーシアムが所有しています。DIG とは、Adobe、Canon、Fuji Film、Hewlett-Packard、IBM、Intel、Kodak、Live Picture、Microsoft により 1997 年 10 月 1 日に設立された非営利団体です。その活動内容は、FlashPix や IIP のプロモーションの実施、イメージングソリューションに対してオープンで互換性のあるプラットフォームの提案などをすることです。また、DIG は、FlashPix と IIP (後述) の開発作業も手がけています。なお、アメリカでの DIG 設立後、日本でも DIG Japan *2 が結成されました。現在 DIG 全体で約 50 社が加盟しています。

*1: http://www.digitalimaging.org/ を参照
*2: http://www.dig.gr.jp/ を参照

3.2. IIP (Internet Imaging Protocol)

IIP は、FlashPix フォーマットのさまざまな特徴をネットワーク経由で利用できるように、Kodak、Hewlett-Packard、Live Picture の 3 社により、共同開発されたインターネット・イメージング用のプロトコルです。IIP は、HTTP 内あるいは専用ソケット接続で動作するよう設計されたネットワーク・プロトコルです。なお、この開発には Microsoft と Netscape の 2 社が参加しており、すでに支持を表明しています。

ここで、IIP の特徴を以下に簡単に列挙します。

3.3. HP OpenPix ソフトウェア

HP OpenPix ソフトウェアは、従来扱うのが困難であった高解像度デジタルイメージデータを安価なコンピュータを使用していても、容易に、かつ快適に操作できることを目指した活動の中から生まれてきたものです。その中心には、上記に挙げた FlashPix と IIP のテクノロジーがあり、それらを Web の環境において活かしたものが HP OpenPix ソフトウェアです。

1997 年 12 月にリリースされた HP OpenPix ソフトウェア 2.1 *3 は、Web サーバー上で動作する OpenPix Server モジュールと、Web ブラウザー上で動作する OpenPix Viewer から構成されています。

*3: http://image.hp.com/ の Web サイトから Developer User として登録後、無料でダウンロード可能です。なお、登録ユーザーの方は、英語での技術的なサポートをこの Web サイトを通じて受けることが可能です。http://image.hp.com/support.html をご参照ください。

▼ Web ブラウザーと OpenPix Viewer 2.1 のサポート構成
Java
アプレット
ActiveX
コントロール
Netscape
プラグイン
Netscape Navigator3.01, 3.02, 3.03,
3.04, 4.03, 4.04
-3.01, 3.02,
3.03, 3.04
Microsoft
Internet Explorer
3.02, 4.03.02, 4.0-
※ MSIE 4.01 での Java アプレットは未サポート

この HP OpenPix ソフトウェア 2.1 の主な特徴を以下に簡単に示します。

HP OpenPix テクノロジーに関する詳細は、http://image.hp.com/ の Web サイトを参照してください。

3.4. FlashPix ファイルの作成方法

ここでは、既存の TIFF や JPEG 画像フォーマットから FlashPix フォーマット・ファイルに変換する方法をいくつか紹介します。

その他、有償のソフトウェアを利用する方法もあります。例えば、Adobe PhotoDeluxe 2.0J やジャストシステムの花子フォトレタッチ、Equilibrium DeBabelizer PRO 4.5 などのソフトウェアが FlashPix フォーマットをサポートしています。

昨今、フォトレタッチツールを始めとして、画像管理ソフト、デジタルカメラに添付される転送ソフトなどにおいて、FlashPix ファイル・フォーマットをサポートするアプリケーションが発表されています。現在、数社が商用向けにさまざまな FlashPix 用 SDK の開発、販売をしていることで、ソフトウェア業界において FlashPix のサポートが広まりを見せ始めています。なお、DIG が提供している FlashPix フォーマットの仕様書に準拠し、かつ FlashPix テストスイートに合格した製品のみが、FlashPix フォーマットの名前を使用することができます (日米で 100 以上あります)。

4. 院内ネットワークへの HP OpenPix テクノロジーの適用

院内全体のイントラネットにおいて、現在の DICOM 規格でシステム構築をした場合、ソフトウェア、ハードウェア、インテグレーション、メンテナンスなどに必要とされるコストがかかるのが問題です。その上、DICOM 画像を参照するための Viewer を院内全体に展開するには、コストもかかる上にメンテナンスの負担も大きくなります。また、期待するパフォーマンスも現状では出ていません。

このような場合、Web 環境で動作する HP OpenPix ソフトウェアを使用することで、より簡単に、よりローコストで、デジタルイメージの高速な表示、管理、参照などが可能となります。この OpenPix 環境下で、外来での患者へのインフォームドコンセント用参照画像表示、学会用のスライド作成、過去画像の参照、一人の患者のマルチモダリティ画像の参照、臨床的代表画像の参照・教育、カンファレンスなどを行うことが時間のない院内での作業にお役に立つのではないかと思われます。

あるいは、既存の院内全体で使用されている DICOM 画像の中で、特に参照用途が多く、重要なものは、FlashPix ファイルへ変換し、OpenPix Server が動作する Web サーバーで管理する。このようなシステム構成にすることで、パフォーマンスが良く、しかもローコストで医療画像を院内全体で参照する環境が構築できると思われます。

今後 HP OpenPix テクノロジーを核に、デジタル入出力環境、RDBMS との組み合わせなど、さまざまな応用を個々のユーザーのニーズに合わせて作り込んでいくことで、より快適な環境を構築することが可能となるでしょう。

5. 謝辞

本 Meeting のデモに使用する画像サンプルを、以下の方々にご協力いただきました。京都府立医科大学芦原司教授から癌細胞画像サンプルを、メダシス・ジャパン株式会社様から CR、CT、MR、US のサンプル画像を、オリンパス光学工業株式会社様から内視鏡画像サンプルをそれぞれご提供いただきました。この場を借りて、感謝致したいと思います。