チーム医療における電子カルテの必要条件
(第42回糖尿病学会ワークショップ発表内容をふまえて)

 

山口赤十字病院内科
古賀 龍彦



 当院では平成元年より市販データベースソフトを用いて糖尿病外来の電子化を開始している。合併症状況や投薬内容、癌検査状況把握が目的であったが、その後入院時1ページ記載、退院サマリー、処方と外来カルテ記載、予約ならびに前回データ付予約カード印字、他科糖尿病患者への術前術後指示、紹介医への医療情報提供書作成と徐々に拡張。さらに病棟看護婦や栄養士もリレーショナルファイルを作成し、種々のパスワード制限下で相互にリンクさせ共有化を開始した。

 入力はポップアップメニューからの選択を多用することで所要時間の短縮に努めると共に、生化学データや眼科受診歴については毎日テキスト形式でフロッピーディスクに落としたものを取り込み、結果の蓄積と逆時系列の自動表示を可能とした。

 共有化しての利点には、まず入院時や指導時に看護婦や栄養士が医師ファイル内容の一部を閲覧することで短時間で経過を把握できると共に、医師も外来診療中カルテをめくらずに入院中の看護婦チェック結果等がモニター上で確認できるなど入院と外来の情報連携が円滑になった点があげられる。栄養士自身で患者生化学データの時系列閲覧が可能となったことから栄養指導箋記載が簡略化され指導依頼も増加した。

 加えて糖尿病治療マニュアルであるである段階的糖尿病管理SDM(米国国際糖尿病センターMazzeら著)日本語訳版をスキャナーで取りこんでデータベースファイル化させ、患者ステージでリンクさせて表示し、治療スタッフに一般的な治療方向性を提示すると共に、患者からの夜間電話問い合わせ時の参照基準とした。多くのインスリン治療患者には個々の患者状況にあわせて一部加筆後インスリン調節基準を打ち出して手渡しを続けたところ、半年でHbA1c値が約1近く差を認めたので患者教育の目的からもこのようなコンピューター利用は力を有すると考えられた。紹介医への返書にもデータ、医師看護婦サマリー要点と共にSDMの患者該当部分を当院の意見を加えて出力させ、治療継続のツールとしている。

 以上が標準化の紹介部分を省いたワークショップ抄録からの抜粋であるが、こうしたチーム医療でのコンピューター利用は、外来診療支援としての電子カルテシステム以上に細かい連携やレイアウトへの配慮が必要と考える。病院情報システムの中心となる基幹データベースシステムはセキュリティー保護のためにも堅牢なものが必要であるが、利用者レベルのフロントエンド作成のあり方について又対応の可能性について私見を提示すると共にお尋ねをさせていただきたいと思います。