IT技術活用による包括的地域医療ネットワーク構築事業

 

八幡 勝也
福岡県宗像医師会・宗像医師会病院
産業医科大学産業生態科学研究所 

 


1.背景

宗像地域は、宗像市を中心とする5自治体(宗像市、津屋崎町、福間町、玄海町、大島村)で構成され、地域の人口は148,756人(平成12年9月1日現在)である。この地域は福岡・北九州両政令指定都市の中間に位置し、15病院71診療所で医療圏を構成している。

宗像地域5自治体と宗像医師会は共同で「宗像地域医療センター」を設置し、宗像医師会病院はその中核機関である。同センター内に健診センター、総合リハビリセンター、宗像医師会、宗像地区急患センター、介護老人保健施設、薬剤師会、訪問看護ステーション、在宅介護支援センター、病後児保育施設が設置され、宗像地域での医療・保健・福祉の中核的施設である。なお、宗像医師会は、平成11年に地域医療の充実により日本医師会最高優功賞を受賞した。宗像医師会病院は、平成12年3月に厚生省より地域医療支援病院として承認され、登録患者数は57,549名(平成13年1月現在)で、地域住民の約40%が登録されている。地域医療機関からの患者紹介率は約90%と高率である。

宗像医師会病院は、中核医療機関としてより高度な医療サービスを提供するために、医療画像のシステム化、オーダリングの導入に平成12年度より着手した。しかし以下の課題がある。

 

2.目的

今回のシステムの目的は、宗像地域の宗像医師会病院を中心とする地域医療機関連携を患者指向の医療提供レベルまで高め、住民へ公開されたよりよい医療・保健・福祉サービスを提供することである。そのためには地域中核病院として宗像医師会病院の地域医療情報システム基盤を充実する事が必要である。そのためには、以下の3項目の実現を目標とする。

 

(1)宗像医師会病院と地域医療機関との情報共有化基盤の構築
 ・情報共有のための宗像医師会病院医療情報のIT化
 ・宗像医師会病院業務のネットワーク化による業務の効率化と安全性の向上

(2)1地域1患者1電子カルテシステムの構築
 ・患者個人単位の地域共有電子カルテシステムの構築

(3)地域の協力医療機関間の情報連携を実現
 ・情報共有による医療情報開示と医療内容のチェック機能
 ・保健・福祉機関など医療機関以外と医療機関との情報連携
 ・患者のプライバシーを保護しながら簡便に利用できる情報利用システム
 ・情報利用システムの可能性の拡大とコストダウンを実現するモバイル通信の導入

 

システム構成の概要は以下のとおりである。

(1)宗像医師会病院

 ・オーダリングシステム【A】

既存のオーダリングシステムにオーダ種別を拡充する。

 ・検査システム【B】

既存の検査機器の情報をオンライン利用可能にする。

 ・画像システム【C】

既存の放射線機器の診断報告書をオンライン利用可能にする。

 ・病診連携システム【D】

病診連携を行う為に、紹介逆紹介情報を管理する。

 ・業務情報共有システム【E】

院内文書情報を共有する。

 

(2)宗像地域電子カルテ管理センター

 ・地域電子カルテシステム【F】

患者医療情報を管理するデータベースシステム。

 ・セキュリティシステム【G】

プライバシー保護と医療関係者の認証を行う。

 

(3)参加機関

 ・診療所向け電子カルテシステム【H】

診療所を対象とした小規模電子カルテシステム。

 ・地域電子カルテ利用システム【I】

地域電子カルテシステムの情報を参照するシステム。

 

想定規模

対象受診者数:本年度2万人

協力医療機関:40医療機関

その他の協力機関:宗像地区急患センター、介護老人保健施設

ID管理:宗像医師会病院の受診カードをそのまま利用。