1. 目的
インターネットの爆発的な普及に伴い、医療サービスのあり方も変革を求められるようになって来ている。現状では、医療サービスの基本となるカルテ情報が医療機関ごとに分断されているため、患者や医療側にとって、シームレスなカルテ情報の利用が不可能である。このため、効率的、効果的な医療を行いにくくなっている。また、患者側からは、ITを利用したきめ細かい医療情報サービスが求められている。この状況を改善するには、ネットワークを用いた医療情報の共有と流通が必要であるが、常時接続型の高速な情報基盤の不足、小規模医療機関の経済的技術的基盤不足など問題も多く残っている。
本プロジェクトは、これらの問題を解決するために、共同利用型医療情報データベースを運用するサービス機関(ASP)を立ち上げ、医療情報の共有と次項に述べる様々なサービスを医療機関のみならず患者へも提供する予定である。
2. サービス概要
平成13年度事業では、次のようなサービスを提供する。
1)無床診療所
・電子カルテの提供新規に開発する電子カルテを安価に提供する。
・医事システムの提供
日医総研開発の医事システム(ORCA)を電子カルテと連携し提供する。
2)大規模医療機関との連携
・検査データ検査センターで発生する結果情報をセンター経由で配信。
・画像診断報告書
医師会病院での画像診断情報をセンター経由で配信。
・退院時サマリー(紹介状、逆紹介状)
熊大病院等、地域の大規模病院で発生するサマリーをセンターに集め一元管理
3)データのバックアップサービス
無床診療所電子カルテのデータを、センターにMML形式で日次送信。このデータを患者の移動に伴い、他の医療機関からも参照可能にする。また、これがバックアップとなる。
4)電子カルテデータの真正性証明サービス
センターに日次送信されたカルテデータの真正性を必要に応じて証明する。
5)共同データベースを利用した医療データ相互参照
センターに送られたデータは、患者ごとにデータベース化され、一定のセキュリティポリシーの元に、他の医療機関からも一元的に参照可能とする。1地域1患者1カルテの概念と言うことが出来る。
6)患者への診察結果配信サービス(iMode端末、パソコンなど)
検査結果などを患者自身が参照することが出来る。
7)Web/電子メールによる診療相談(主治医・患者)
Web/電子メールなどのツールを使って、主治医に対して診療に関する問い合わせなどを行うことが出来る。
図に示したように、平成13年度は患者、無床診療所と大規模医療機関に限られるが、次年度は薬局など、周辺業務も参入する予定である。
本プロジェクトの特徴は、
1)センターサーバとのデータの交換規格にXML(MML)採用
2)無床診療所電子カルテと医事システム(ORCA)の結合にもXML(CLAIM)を採用
の2点に尽きる。XMLというオープンな規格の採用によって、センターと参加機関が独立性を保ちつつ、効率的な情報交換(結合)を行うことが可能で、それぞれのインターフェイス開発の責任分界点も明確になるという利点がある。新規開発の電子カルテと医事システムもXMLを採用したことによって、XML(CLAIM)を装備した、他の(既存の)医事システムとの組み合わせも可能となる。すなわち、本システムはXML(MML,CLAIM)というオープンな規格により構成されたものであるから、今後、MML,CLAIMを装備した電子カルテ・医事システムを別途採用し、ユーザーの選択の幅を拡げることが可能となるのである。今後の地域共同利用システムの開発は、本プロジェクトの如く、オープンな規格を採用すべきであると考える。
3. 参加予定機関
・無床診療所:
10診療所(応募40余から絞り込み中)
・大規模医療機関:
地域医療センター(X線検査レポート、検体検査結果)、熊本大学病院(退院時サマリー)、済生会熊本病院(退院時サマリー)、NTT西日本九州病院(退院時サマリー)