HL7 Clinical Document Architecture Release 2
村上 英
東芝住電医療情報システムズ(株)
■HL7 Clinical Document Architectureとは
HL7 Clinical Document Architecutre(HL7 CDA)とは、システム間での交換を目的とした、「診療文書」の構造とセマンティックを定めた、文書のマークアップ規格です。
・システム間での交換を目的にする
HL7 CDAは、診療文書の最終的な保管用のフォーマットや、診療文書を扱うシステムの内部での情報形式を定めることを意図したものではなく、HL7 CDAに対応したアプリケーションは、そのアプリケーションの機能に応じて、外部への出力形式としてHL7 CDA文書を生成するか、外部からの入力としてHL7 CDA文書を受け取ります。
・「診療文書」の構造とセマンティックを定める
HL7 CDAは、実際の診療業務の上で発生する各種の情報のうち、情報交換の起こるユースケース上、必要または意味のある情報について、どのような形式で、どのような内容を含んで表現されるかを定めています。
・文書のマークアップ規格である
HL7 CDA文書は、断片的かつ一時的なメッセージではなく、全体としてのまとまりをもった永続的な文書であり、人間とコンピュータの両方が読めることを意図しています。
■Release 1(CDA R1) と Release 2(CDA R2) の相違点
HL7 CDAには、2000年にANSI/HL7の正式規格となった、HL7 Clinical Document Architecuture Release 1.0 (CDA R1)と、2005年にANSI/HL7の正式規格となったHL7 Clinical Document Architecuture Release 2.0 (CDA R2)があります。、
・共通の基本構成要素
CDA R1もCDA R2も、文書の書誌的な情報を格納するヘッダ、文書の中身を格納するボディ、文書の章立てを形成するセクション、コード化された情報を格納するエントリの基本構成要素を持つ点は共通です。
・医療用のHTML文書といった趣きの CDA R1
CDA R1では、全体は、医療用のHTML文書と言う趣きで、ヘッダとボディがそれぞれ独立したタグで分けられ、ボディの中では、セクションは、他のタグと同列のように扱われています。エントリも文書中のタグとして、単独で指定され、テキストとのリンクは指定できますがコード間の関連の表現は限られます。
・階層的なクラス構造で表現される CDA R2
CDA R2では、明確なヘッダを表すタグがなくなり、ヘッダはドキュメント全体を表すクラスに吸収され、ドキュメント→ボディ→セクション→エントリという階層的なクラス構造で文書が表現されています。この構造は、HL7のオブジェクト指向に基づいた方法論によってつくられた、HL7 CDA R-MIMというモデルによって表されます。
・よりコンピュータによる処理を重視しているCDA R2
CDA R1と違い、CDA R2のXMLインスタンスは、HL7 Version 3共通のXML実装技術仕様XML Imprementation Technology Specification(XML ITS)により、機械的に生成されることを意図しています。また、より構造化されたコード化情報の表現方法が規定され、診療の詳細な内容、Clinical Statementの表現がサポートされています。
■Clinical StatementとSemantic Interoperability
・Clinical Statement
CDA Release 2の正式規格化が、ひとつの契機となって、会計上や、管理上の情報だけでなく、実際の診療の内容を、HL7の参照情報モデルReference Information Model(HL7RIM)を用いて表現しようという動きが活発になっており、その表現された診療の内容(およびその表現)をClinical Statementと呼びます。
・Semantic Interoperability
このClincial Statementが重要な意味を持つのは、システム間で、コンピュータが理解可能あるいは処理可能な診療上の情報を、幅広いシステムの間で個別に接続仕様を決めることなく、解釈の誤りなく伝達して活用しようという、SemanticInteroperabilityの考えが根本にあります。HL7 CDA R2は、このSemantic Interoperabilityの実現の基盤として、注目を集めています。