EHRとEMR、日本の考えと西欧の考え

千葉大学医学部附属病院
地域医療連携部
藤田伸輔


 

レセプトに始まった電子化はオーダシステムを経て、電子カルテ(EMR)へと発展した。そして複数の施設間での診療情報の共有が各地で試みられ、複数の医療機関のデータを一元管理して個人の一生涯の医療情報を作ることが真剣に語られるようになった。言い換えればEMRの延長としての生涯型電子カルテである。一方世界に目を転じると、東南アジアから中近東にかけては自分のカルテは自分で保存するというPersonal Health Recordが古くから中心であり、欧米でもこの自己管理型電子カルテ(PHR)が注目されるようになり、PubMedでは1978年からMeshに採用、2000年以降PHRが数多く論文中で使用されるようになった。今ひとつの流れは病名や処方などの最低限の医療情報に絞って共有を目指したもので、糖尿病に特化したDiabCardなどがある。この最低限の医療情報は患者安全Patient Safetyを基準に選ばれたものであり、電子カルテ導入は行わず病名・処方・アレルギー歴・サマリを直接入力するタイプのHERを導入しようとしたカナダInfowayの例もある。
国際標準医療用語集としてのSNOMED-CTの意義はPatient Safetyに基づく利用にある。しかしこの範囲にのみ限定すればわが国のMedis標準化シリーズで十分にカバーできており、SNOMED-CTを導入には慎重であるべきである。